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「まーちゃーんっ!どーこーっ!」

誰かを探しているのか、人物の名前と思われるものを街中で叫びながら歩いている女性がいた。

「誰を探してるん?沙羅架」

その女性に話しかけたのは、小柄で中世的な顔をした白い獣耳の生えた関西弁を喋る少年だった。

「あー、つっきー!」

沙羅架と呼ばれたその女性は、少年に向かって笑顔で答えた。
少年の名前はツキシマ。奪い屋というものをしている。
といっても、泥棒とかそういうものではない。

「ボクね、まーちゃんに用事があるんだけど〜…まーちゃんしょっちゅう寝るところ移動するから今どこにいるか知らないの!」

「あ〜、それ俺もわかるわ〜…。あいつ同じところに留まらんしな〜…」

ちなみに、沙羅架のいっているまーちゃん、というのは真音の事であった。
ツキシマは沙羅架の言葉に頷きつつ、沙羅架にこう言っていた。

「なら、カーネにきいたらいいんとちゃう?もしかしたらカーネならしっとるかもしれんし」

「なるほど〜カー姐のところにいけばいいのか〜」

納得したように沙羅架は頷いていた。そして、2人はカーネの店に行こうとしたが…。

「あ、沙羅架さんにツキシマさん、良いところに!」

季節菓子職人の少女、夢來が2人を呼び止めてきた。
夢來は買い物したばかりなのか両手いっぱいに紙袋を持っていた。
ちなみに中身は全部お菓子の材料である。

「なんや?夢來」

「あの、ちょっと私の家に来てくれないですか?っていうか、今何かしてましたか?呼び止めたのなら申し訳ないのですが…」

夢來は2人がどこかに行こうとしていたのを察したのか、そう言っていた。

「いや、いいよ。ただ、まーちゃんを探してただけだし」

「まーちゃ…あ、真音さんですね。真音さんは瀧山さんと何かしてましたよ?2人っきりで」

「「!?!?」」

沙羅架とツキシマは、夢來の言葉の最期についていた”2人っきりで”という単語に過剰反応していた。

「たっきー確か30歳だよね?まーちゃんがもう少し小さかったら完全にはんざいじゃないの?」

「そういや、聞いた話やと真音と瀧山は10年くらい前に会ったことがあるとかゆう話を聞いたことがあったな〜もしや…瀧山ってロリコンちゃうん?」

「ちょっとちょっと2人とも!何を言ってるんですか!?瀧山さんがそんな人な分けないですよね?!」

「いやでもな夢來、沙羅架。俺最近気付いたんやけど真音って瀧山と話してるときが一番笑顔が多いきがするんは気のせいなんか?俺そう思うんやけど」

「え!?じゃあたっきーがまーちゃんをすきなんじゃなくてまーちゃんがたっきーすきなの?!」

3人は暫くこの話題で盛り上がっていたのだった。

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「うぇくしっ!?!うああああああああ痛い痛い痛い…真音ちゃん痛い!おじさん気持ちは嬉しいけど!腰壊れる腰イイイィィィィっっっ!???!!!!」

ちなみに、瀧山は真音からのマッサージを受けていて天国への階段を上りかけていたのだった。

「瀧山!あたしあれから、一応っ!成長はっしてるんだよっっ!」

真音はマッサージという名の関節技を瀧山にクリティカルヒットで当てているのであった。

「うわあああああああああああああっ!ゴキって、ゴキって言ったよ真音ちゃん!?」

「ごちゃごちゃ言わない!」

「し、死ぬうううううううううううううううううううううううううううううううううっっっ!?!?!?!?!?」

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「なんか今遠くから瀧山さんのと思われる叫び声が聞こえたのですが…」

「気のせいやないんか?俺にはきこえてへんけど」

「ボクにもきこえなかったよ〜?」

一方ここは夢來の家だった。
あれから真音と瀧山の話題で暫く盛り上がった一行であったが、夢來が沙羅架達に話しかけた目的を思い出し、夢來の家に呼ばれたのであった。

「まあいいです。先程、試作のお菓子を作ってたんです。でも、流石に大量を1人では処理し切れなかったのでツキシマさんや沙羅架さん達にも処理してもらおうと思ったんです」

そう言った夢來の後ろには、沢山のお菓子が見え隠れしていた。

(なあ、俺らあれを全部食べるん?)

(わ、わからないよぅ…)

「これとか、今の春という季節にあっていると思うんです」

夢來が持ってきたのは春のイメージに相応しく、ピンク色のクリームに苺ののった可愛らしいケーキだった。

「で、このケーキが今5ホールほどあるんですが…」

「「え!?」」

「はい?」

「夢來今さらっととんでもない数いわんかった!?」

夢來の言ったケーキの数にツキシマと沙羅架は驚きの目を隠せずにいた。

「あと、夏のお菓子とか秋のお菓子とか冬のお菓子とかも材料が集まる物は色々作ってみたんです。ここ最近はなんだか調子がよくて沢山のおかしができちゃったんです。あ、でもこれ全部食べてもらうわけじゃありませんので安心してください。食べてもらうのはこれのたった5分の3ですから」

「「たったじゃないいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいっ!!!!」」

2人の叫びが綺麗に重なった。

「だって、沢山作りすぎてしまって…まだちゃんと調整もしてないので店に出すわけにも行きませんし…」

夢來は少しだけ申し訳なさそうに言った。
ツキシマと沙羅架はあれを全て食べさせられるよりはマシだとそうと思おうとしていた。
夢來の後ろに見える、ケーキの数を考えれば…。
沙羅架もツキシマも、当初の目的を忘れただただ冷や汗をかくだけだった。

「あ、これお持ち帰りしてもいいですよ?ですが、これは全部1週間以内には食べてください。あと、一つ一つのお菓子の感想もください。店に出せるかどうかの調整もありますので」

もう2人はどうにでもなれとしか思えなかった。
沙羅架はふと思った。

(…夢來の調子が良いときって、こんな風になるんだね…)

その後、2人がどうなったかは、言うまでもない話であった。


続く
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次回予告
ヴニー「どうも!みぃんなのアイドル、ヴニーちゃんだよ〜!それにしても沙羅架とつっきー、なんだかお腹痛いとか気持ち悪いとか言ってたけど、大丈夫かな?あ、そうそうあの後皆に夢來ちゃんからのお菓子の贈り物があったんだ!沙羅架とつっきーはたべなかったけど…凄い青い顔してたな〜。え?もうそろそろ次回予告しろって?うん、わかった。じゃあ、次回は戦闘だって!なんかね、おっき〜い怪獣と戦うんだってさ〜ヴニーちゃん?戦わないよ〜やっぱり瀧山とかでしょ!じゃ、次回も庭園のクオリア、宜しくね!」

Written by sinne



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